ICLでの近視矯正手術

ICL

ICL手術は近視矯正手術のひとつで、目の中にレンズを埋め込み角膜を削らない視力矯正手術です。

ICLとは

ICL : Implantable Collamer Lens

ICLとは眼内コンタクトレンズのことで、 Implantable Collamer Lens の略です。
ICL手術は視力矯正手術のひとつで、目の中にコンタクトレンズを埋め込むことで視力を調整する、レーシックなどと異なり角膜を削らない近視矯正手術です。
ICLは後房型有水晶体眼内レンズやフェイキックIOL(後房型フェイキックIOL)とも言われます。

後房にICLが入っている様子

近視矯正手術というとレーシックが広く知られていますが、ICLの歴史はレーシックよりも古く、1980年代には開発が行われています。
日本では1997年に初めて導入され、2010年に厚生労働省の承認を受けた視力矯正手術です。

ICLは改良が加えられ、レンズの中央に極小の穴をあけた Hole ICL が開発されたことで当初の白内障が進行するリスクが改善され、Hole ICL は現在では世界80か国以上で承認された世界的スタンダードとなっています。日本においてはこの Hole ICL による治療がレーシックに代わる近視治療、視力矯正治療として普及が進んでいます。


ICLの特徴

見え方の質が向上

ICLはレーシックなどの視力矯正手術と異なり、角膜を削りません。
レーシックやレーシックよりも新しい近視矯正手術のリレックススマイルは、角膜屈折矯正手術とも呼ばれるように、これらの近視矯正手術は角膜を削って角膜のレンズとしての度数を変えることで視力の調整をします。

これに対してICLでは目の中にコンタクトレンズを埋め込むので、角膜を削ることがありません。

レーシックなどのように角膜を削る近視矯正手術の場合には、手術後にコンタクトレンズや眼鏡で矯正できないような角膜のわずかな歪みが出ることがありますが、ICLでは角膜を削らないので手術後に角膜に歪みが出る心配がありません。

また、ICLで眼の中に埋め込むレンズは交換する必要がないため、長期にわたって安定した視力を維持できます

強度近視にも対応

ICLは眼の中にレンズを埋め込むため、レーシックやリレックススマイルでは対応できない近視が強い方にも対応可能です。
また、角膜の厚みが足りずにレーシックやリレックススマイルを受けられない場合でも、ICLなら多くの場合治療が可能です。

例えば、比較的新しい近視手術のリレックススマイルでも、近視の強い方、乱視の強い方には対応できません。
また、角膜の厚さが薄い場合にもリレックススマイルの適用とはなりません。

日本眼科学会のガイドラインでは、強度近視(-10D以上)の方へのレーシック治療は禁止されていますが、ICLは強度近視の方も対応可能です。

長期にわたり視力を維持

眼に埋め込むレンズは交換の必要がありません。また、眼の中のコンタクトレンズで視力を調整するため、レーシックでみられる手術後の視力の戻りが無いので、長期にわたって回復後の視力を維持することができます。

生体適合性の高い親水性素材

ICLは Implantable Collamer Lens の略ですが、「Collamer®」(コラマー)はレンズの材質を意味します。
このコラマーはHEMA(ハイドロキシエチルメタクリエート)とコラーゲンの共重合体素材で無色透明の素材です。紫外線をカットする性質を持っており、ソフトコンタクトレンズのように水分の含んだ柔らかな素材でできています。

コラマーは含有するコラーゲンによってマイナス荷電をおびておりタンパク質などの粒子が沈着せず、非常に生体適合性の良い素材となっています。

可逆性

角膜を削った場合、角膜が元に戻ることはありません。
これに対してICLは可逆性の高い手術となっていて、眼に埋め込んだレンズは取り出すことができ、取り出すことで眼の状態を手術前に戻すことができます。このため思うような視力が得られなかった場合などの場合には、レンズを取り出すことができます。
このため、将来白内障の手術が必要になった場合でも、白内障治療のレンズと置き換えることができます。

ICLとレーシックとの違い

視力矯正手術や近視手術というとレーシックがよく知られています。
レーシックはさまざまな治療方法のある視力矯正手術の一種で、大変普及している視力の治療方法ですが、現在はこのページでご紹介しているICLのように、より安全性が高くデメリットの少ない視力矯正手術が行われるようになっています。

近視の戻りが少ない

レーシックには近視の戻りという現象があります。近視の戻りとは手術後数年経過すると徐々に視力が手術以前の状態に戻ってしまうことをいいます。
これに対してICLは近視の戻りが少なく、長期にわたって治療後の視力を維持することができます。

角膜を削らない

角膜を削って視力を調節するレーシック対してICLは角膜を削ることはありません。
このためレーシックでは手術後にコンタクトレンズや眼鏡で矯正できないような角膜のわずかな歪みが出ることがありますが、角膜を削らないICLではこのようなゆがみが出ることが無く、クリアな視界が得られます。

リスクが少ない

レーシックでは角膜の表面をフラップと呼ばれる薄い膜状に切るため、角膜の切開創は28mmとなります。
これに対してICLでは眼の中にレンズを挿入するために切開創がわずかに3mm程度となります。
このため角膜の知覚神経に傷がつかず、また、手術後にドライアイを感じることが少なくなっています。

ICLの場合角膜の切開創は3mm程度

参考:ICL研究会

ICLによる手術の流れ

クリニックによって違いはありますが、ICLによる手術の流れはおおむね下記のようになります。

適応検査を予約

まず、ICLを受けることが出来るかどうかや、眼の状態を確認するために、「適応検査」を受ける必要があります。

近視手術を実施しているほとんどのクリニックでは、ホームページから適応検査の予約することができ、無料で適応検査が受けられるクリニックもあります。
また、疑問点や不安なことがあれば、適用検査の際に確認しておくといいでしょう。

適応検査

適応検査を受けます。

検査は通常、視能訓練士という国家資格を持った専門職により行われ、屈折度や眼圧、視力など、さまざまな検査を行い、ICL手術が安全に実施できるかを確認します。

なお、検査前にはコンタクトレンズの装用中止期間があります。
通常は、
・ソフトコンタクトレンズ:検査3日前より装用不可
・ソフトコンタクトレンズ(乱視用):検査1週間前より装用不可
・ハードコンタクトレンズ:検査2週間前より装用不可
となります。

なお、検査後は手術前日まで装用可能、手術当日のみ装用不可となります。

診察

改めて医師の診察を受け、適応検査の結果をもとに患者に最適な治療プランを決めていきます。
医師などの説明に納得できれば手術を受けることになります。
手術を受けることになれば、その後患者の目に適したレンズをクリニックが手配します。

手術日程決定

クリニック側でレンズの用意ができると、患者の都合と調整して手術の日程を決めます。

術前点眼

手術3日前から、1日4回点眼をする必要があります。
点眼薬には殺菌作用があり、術後の感染症防止にも有効なものです。

手術

手術当日は術前に医師による診察を再度行い、手術の安全性に問題がないことを確認後にICL手術の実施となります。

手術の30分前に点眼麻酔を数回行います。

ICL手術自体は片目約10分から15分程度としているクリニックが多いようです。
手術後は30分間程度安静にしてから帰宅となります。

術後検診

手術後は定期的に検診を受け、目の状態を検査します。

手術翌日・翌々日・1週間後・1か月後などに検診を受けます。

ICLによる手術を実施しているクリニックにはICLについての無料説明会を開催しているクリニックも多いので、利用してみるのも良いでしょう。

費用について

ICLによる手術はレーシックやリレックススマイルと同様に保険適用とはならないため、費用が気になるところです。※

ICL研究会の会員クリニックでの費用を見てみると、近視の度合いや乱視の有無によって費用に差がありますが、両目で概ね、
50万円程度から80万円程度(消費税込)
の場合が多いようです。

ただし、クリニックによって、適応検査が有料であったり無料であったり、手術後の検診費用が有料であったり無料であったりしますので、ICLを受けることを検討する際には確認が必要です。

また、クリニックによっては手術後の保障がある場合があり、保障内容についてもクリニックごとにさまざまです。

※ 民間の医療保険の給付条件によって「有水晶体眼内レンズ挿入手術」が保険対象となる場合があります。
また、医療費控除の対象となります。

ICLのリスクやデメリット

ICLは安全性が高い視力矯正手術とされていますが、リスクがゼロというわけではありません。
まれに後遺症・合併症が起こる可能性があります。

ICLのリスクやデメリットには、以下のようなものがあります。

リスクについて

度数ずれの可能性

目標としていた度数に対して、手術後に度数が強すぎる過矯正、または度数が弱すぎる低矯正となる度数ずれになることがあります。
ただし、ICLの場合はレンズの交換が可能ですので、過矯正低矯正でも対応が可能です。

白内障となる可能性

手術の際に水晶体に接触するリスクがあります。確率は非常に少ないもののこれによるダメージにより白内障になる場合があります

感染症

眼ににレンズを挿入する際は、メスで角膜を3mm程度切開します。この傷口から菌が侵入すると感染症を招く恐れがあります。
手術後に傷口が塞がっていない状態で目に異物が入ったり、目を触ったりすると感染症を引き起こす可能性があるため、手術を受けた本人の手術後の過ごし方にも注意が必要となります。

ハローグレア

夜に見る光がにじんで見えたり光にリングがかかったように見える、光がいつも以上に眩しく見えるなどのハローグレア(ハログレア)現象が起こることがあります。
ほとんどの場合は見え方が時間とともに徐々に安定してきます。

炎症

手術後は傷口の炎症が1~2週間程度生じることがあります。

度数の変化

手術前に検査して各患者の眼に合わせたオーダーメイドのレンズを挿入します。しかしレンズを入れたあと、近視が進行することもあります。

視界のぼやけ

視力が安定するまで、視界がぼやけることがあります。
通常は翌日~数日で徐々に改善されます。

デメリットについて

通院が必要

手術後は経過観察のため、定期的な検診が必要になります。
手術翌日の検診がありその後、翌々日、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後と検診を受けるケースが多いようです。

しばらく生活に注意が必要

手術後の日常生活に大きな支障はありませんが、完全に普段どおりの生活に戻るには1ヶ月程度必要とされます。
激しい運動を控えたり、車やバイクの運転についても控える必要があります。

ほかに手術後は入浴や飲酒、アイメイクなどについて数日は控える必要があります。

また手術後しばらくは点眼薬が必要です。

コンタクトレンズが使えない期間がある

ICLを受けようとする人にはコンタクトレンズを使用している人が多いと思いますが、使用しているコンタクトレンズの種類によって、適応検査の1~3週間前はコンタクトレンズの使用が出来ません。
これはコンタクトレンズによる角膜への影響がない状態で検査をする必要があるためです。

適応検査と術前検査が行われることがありますが、それぞれ医師の指示に従ってコンタクトレンズの使用を中止する必要があります。

手術まで時間がかかる

ICL手術を受けられるかどうかを確認するための適応検査から実際の手術まで3~4ヶ月かかることが多いです。
千差万別の患者の眼に合わせたレンズを選定するための検査が必要になり、レンズはオーダーメイドとなるためレンズの入荷までにも時間がかかります。

このサイトでご紹介している病気や症状、治療方法については、代表的なものをご紹介していますが、実際の症状や治療方法などについては個人差があります。
症状などについてお心当たりのある場合は、眼科にて診察を受けてください。